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いんえいらいさん

陰翳礼讃

谷崎 潤一郎

「経済往来」1933(昭和8)年12月号、1934(昭和9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,020 字 · 61 页

青空文庫

私はいろ/\智慧を絞って、百姓家にあるような大きな炉を造り、中へ電気炭を仕込んでみたが、これは湯を沸かすにも部屋を温めるにも都合がよく、費用が嵩むと云う点を除けば、様式としてはまず成功の部類であった。で、煖房の方はそれでどうやら巧く行くけれども、次に困るのは、浴室と厠である。偕楽園主人は浴槽や流しにタイルを張ることを嫌がって、お客用の風呂場を純然たる木造にしているが、経済や実用の点からは、タイルの方が万々優っていることは云うまでもない。たゞ、天井、柱、羽目板等に結構な日本材を使った場合、一部分をあのケバケバしいタイルにしては、いかにも全体との映りが悪い。出来たてのうちはまだいゝが、追い/\年数が経って、板や柱に木目の味が出て来た時分、タイルばかりが白くつる/\に光っていられたら、それこそ木に竹を接いだようである。でも浴室は、趣味のために実用の方を幾分犠牲に供しても済むけれども、厠になると、一層厄介な問題が起るのである。

○

私は、京都や奈良の寺院へ行って、昔風の、うすぐらい、そうしてしかも掃除の行き届いた厠へ案内される毎に、つく/″\日本建築の有難みを感じる。