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かいだん

階段

海野 十三

「新青年」博文館、1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,588 字 · 32 页

青空文庫

ところへヒョックリ四宮理学士が姿をあらわして、これから所内を案内するから附いて来給えと言う。僕は喜んで椅子から立ち上って一緒に廊下へ出た。学術雑誌で名前を知っている偉い博士たちの研究室が、納骨堂の中でもあるかのように同じ形をしてうちならび、白い大理石の小さい名札の上にその研究室名が金文字で記されてあった。最後に豊富な蔵書で有名な図書室とその事務室とを案内してくれることとなった。先ず事務室へ入ると大きい机が一つと小さい机が一つと並んでいる外に和洋のタイプライター台があった。そして四方の壁には硝子戸棚が立ち並んで、なんだか洋紙のようなものがギッシリ入っていた。大きい机の前には一人の二十五六にも見える婦人が、黒い着物に水色の帯をしめて坐っていたが、四宮理学士が声をかけると共にこちらへ立ち上って来て、

「わたくしが佐和山佐渡子でございます」と丸い肩を丁重に落して挨拶した。

「理学士佐和山さんです。×大を昨年出られた……」と四宮理学士が註を加えた。僕はその名を知っていた。あの天才女理学士が、こんなに若い女性で、しかもこの研究所に居て洋服はおろか袴もつけていない平凡な服装をしているのを発見して驚いてしまった。