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かいだん
階段
海野 十三
「新青年」博文館、1930(昭和5)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,588 字 · 32 页
どうしたものか鳥渡気になったので手にしていた本を抛りだすと、螺旋階段をすかして二階なり一階なりをすかしてみたが狭い視野のこととて別に異状も見当らない。唯、あまり僕の立っているところが高いので三階から下まで急転落下しそうな脅迫観念に捉われたので、首を引っこめると、念のために二階へ降りてみた。一見異状はないようであったが、階段のうしろに当る狭い書棚の間から、リノリュームの上に長々と横わっている二本の男の脚を発見したときには、
「やっぱり、先刻やられたんだな」
と思った。恐わ恐わその方に近よってみると、これはたいへん、倒れているのは所長の芳川博士であったではないか。僕は大声をあげて博士を抱き起してみたのであるが、博士の身体はグッタリと前にのめるばかりで、もう脈搏も感じなかった。どうしたのかと仔細に博士の身体を見れば、ネクタイが跳ねあがったようにソフトカラーから飛びだして頸部にいたいたしく喰い入っている。それは明らかにネクタイによる絞殺であることがうなずかれた。
声に応じて事務室からとび上って来たのが佐和山女史だった。やがて別の入口をとおって四宮理学士が駈けあがって来た。