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ずいひつ しんへいけ

随筆 新平家

吉川 英治

在线阅读吉川 英治《随筆 新平家(ずいひつ しんへいけ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 213,575 字 · 424 页

青空文庫

(二六・八・五)

*

この夏の猛暑のため、弱腸のぼく、ほとんど消化力を欠き、余りな節食を通したせいか、少々、原稿紙がかすんで見えたりし出したので、急に客を避けて、もう少し山国の方へ半月ほど逃げこむことにした。

従来は旅行先でもよく原稿は書いたものであるが、「新・平家物語」起稿以来、家を出て仕事をするのは初めてである。なにしろ参考書類だけ持つのに、小さな引っ越しほどの荷物になった。

遅稿のため、杉本画伯の手もとに、原稿の滞留期間、わずか一日半しかないというのを聞き、同君の芸術的良心にたいしても、なんともすまない気持である。机の引っ越しがすみ次第、岩角から腰を上げて、杉本氏自身にも楽しんで描いてもらいたいと念じている。

物語は“平家繁昌”のさかりと、入道清盛のいわゆる極悪横暴にはいるのであるが、それは古典の筋と、旧来の先入観で、自分の「新・平家」では大いに見解がちがっている。前々回の車争いの事件でも、古典では「平家の悪行これより始まる」となっているのであるが、ほんとは書いた通りである。清盛という人物の全貌も、かつての歴史に決定づけられた清盛よりも、自分の書いている清盛その人の方が、たしかに真実に近いのである。