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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

しかも口ほどぴったりではない。音枝はそのことにほっとし、

「きゅうくつそうよ。ふとってみえるわよ。」

いたいところをついたつもりでいったが浜子は動じない。

「うそよ。ぴったりって、こんなのをいうのよ。ひきしまって、気もちがいいわ。ね、ちょっとそこらへん歩いてきていい?」

気どって玄関へ出ていった浜子は、今度は大声で、

「おねえさん、靴、かりるわよ。」

音枝が返事もしないでいると更にきどった声で、

「いってまいりまーす。」

十分がたった。それで浜子が帰ってくるとは音枝は考えていなかった。電車通りまで出かけていったとして、どうせしゃなりしゃなりとウインドに姿をうつしながら歩くとすれば三十分や五十分で帰れっこないと思い、最小限を一時間ときめてトケイをみた。十一時十分前だった。

――あつかましいったらないわ、ほんとに……

つぶやきながら井戸ばたに出て、つけてあった洗たくものにかかった。どういうのか洗たくというとやたらいやがって、不きげんになる浜子のことを思いうかべながら、音枝はなんとなくやけくそな気もちで洗った。あした浜子の洗たく当番にはハンカチーフ一枚ものこすものかと、そんなことを考えていたのだ。