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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

その安江の無口を無視して浜子は更につづける。

「ねええおばさん、東京の男の人って、みんなそうなの?」

「そうなのって、どうなの。」

「だって、電車にのって、そんな目にあわない日ってないんですもの。」

安江は仕方なく苦笑しながら、

「だから気をつけないとこわいのよ浜ちゃん。相手になっちゃあだめよ。あんたが押しかえしたりするから、一しょに降りてきたのよ。そんなときには、にらみつけてやらなくちゃあ。」

すると浜子はふふっと笑い、

「大丈夫よおばさん、こう見えてもわたし、大丈夫なんですから。」

「なにが大丈夫なのよ。甘くみちゃあだめよ。」

「甘くなんかみてやしないわ。むこうで手をにぎるってのは、いわば一種の好意でしょう。それをにらみかえすなんて、おかしくて。――だからわたし、手をにぎられたとき、わざとにぎりかえしてやるの。損ですもの。」

その不敵さにあきれながらも安江は、だまってしまうわけにはゆかなかった。少し茶化して、

「それも男女同権てわけ?」

浜子はまたふふっと笑い、

「それもそうですけど、ほんとはわたし、男と女とがどんな風になっていくものか、その進行過程を知りたいんですわ。