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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

がちゃっと開いて、当然部屋へ招じられるつもりだったのに、進君はドアから顔だけを出し、

「なんですか。」

「ね、あんたさっき、一キロ分百円っていったわね。」

「はあ。」

「あと、六キロで、五升ね。」

「はあ。」

「それですむ勘定?」

「そうじゃ、ないですか。」

「わたしも、そう思ったのよ、だけど。」

音枝は思わず、うふっと笑い、

「配給の方の立て替えは、どうするの。」

「あっ、いけねえ。」

進君は本気な声を出した。音枝は思いっきり笑い出した、

「ね、そうでしょ。配給米の代金と二重払いになるでしょ。いくらなんでもね、これはだまっていられないでしょ。」

進君はまっかな顔になり、

「すみません。ぼく、気がつかなかった。あんまり、ぼろすぎると思ったんだ。」

そのとき、進君の部屋の中から、キュウというような女の押えた笑声がした。音枝ははっとし、

「あら、お客さま。」

「はあ。」

なーんだ、それでやみ米やになったのかと思いながら引っかえした音枝は、日記帳の七百五十円なり――の次へ書きたした。

――ただし一キロだけ入荷。(進君はどうもおかしい)

一金百円なり(冬太郎失敗の巻)

こう書きつけて音枝は思わずくすっと笑う。