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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
」
「ずるいよ。ぼくにさき答えるべきだよ。」
「じゃあ申しますがね、以前、うちのおとうさんが、そっくりそのままの手にのったからですよ。――さ、今度はそっちだ。」
これには冬太郎も顔色をかえ何ともいえずだまりこんだ。くやしくてならぬがいいかえす自信がぐらつき出してきたのだ。それを見ぬきでもしたように安江は、
「ま、いいさ。人を信じるってことは悪いことじゃあないからね。しかし、あんまりやすやすとだまされるのもくやしいじゃないか。君はだまされなかったんだからいいようなものの、そんな目にあったものは、忘れられないからね。おとうさんのようにさ。まるでだまされた責任を、だました人だけにもってったりしてさ。でも、これでまた、人にだまされない人間なんてのもあんまり感じはよくないね。私のようにさ、そんな人、わたしは好きじゃないよ。だからさ、もしも冬太郎がだまされたとしてもだよ、そんならそれでいいさ。その上まだその人を信じるというなら、こいつはめでたいよ。がっかりなんかすんなよ。どうだい、一つ皮肉がいいたいところだけど、よしとこう。」
それをしおに立ちあがって、安江も部屋に引揚げた。