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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
「――まったく、いいご身分だよ、男ってものはね。金も力も、なくても、亭主づらして威張ってられるんだものね。そこへいくと、女なんてかわいそうなものさ。棺おけにかた足つっこむほどの年になっても、女中になと子もりになと融通がきくんだからね。」
「融通がきくからいいのよかあさん。男の気のぬけたのほどやっかいじゃないもの。こっちがその気なら雇ってくれるものね。そこへいくと、じいさんの古手はだれも相手にしてくれやしないわよ。」
その時のことを思い出した兵六さんは、憤然として立ちあがった。そして、例によってひとり言である。
――ようし、おれだって、やろうと思えばやるんだぞ!
まず兵六さんの頭に浮んだのはかどの酒屋であった。時時いって店先でコップ酒をのみながらの相手になってくれる三河屋の隠居ならば、打ちあけて話せば親身になってくれそうな気がした。
――三河屋さん、何ぞ、わしにできる仕事はありませんかな。ほんの小使いとりか、さもなくば食わしてもらうだけでよろしいんですがな。どこぞお得意さんに、庭そうじでもする人間をさがしとったら、お世話してくださいよ。遊んどるのももったいないと思いましてな――