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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
二三子が恋しい。二三子さえいれば、かたい飯でもありつける。
――おせいよう。二三子よう……
兵六さんは心の中で大声をはりあげた。涙がこめかみをつたわって畳にぼそっと音を立てた。
――二三子よう、おせいよう、こらえてくれい……
彼は母を求める子供のように泣いじゃくった。そうしてどのくらいの時が立ったろうか。いつのまにか落ちていた眠りからさめると、あたりは暗くなっている。こわれたまま満足な時計もない家の中だが、窓からのぞいた外の様子ではどうやらまだ宵の口らしい。彼は立ちあがってほうきをつえにしたまま思案した。えいっ! となげつけてみたが、どうにもならない。五本のほうきは束になったままおとなしくねている。彼はもう一度それをたたきつけておいて外に出た。いつかのくじいた足がまた痛み出したことに気がついた。そばやの方へ歩いてゆきながら彼は深い深いためいきをした。
――三河屋に、何といおうか。
それが目下のためいきのもとである。それでも腹をつくると少し元気が出てきた。三河屋の方へ歩きながら、
――どうも、きょうのところはだめでしたわい。そのうち慣れましょうがね。