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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
眠ってはいないらしく、薄い夏ぶとんを動かす呼吸はこまかく、静かだった。
「どうしたの、おかあさん。」
冬太郎が何かを感じたらしく音枝に問う。
「くたびれてんのよ。ねかしといてあげよう。おとうさんと一しょでいいよ。」
何気なさそうにいうと、夏樹は、いやだアいやだアと叫びながらまくらもとへかけてゆき、
「かあちゃん、ごはんですよったら、ねえ、ごはんだよう。あっ あっ たぬきねいりだよ。おかあちゃんたら、ぼく、まってたんだよ。ごはん。ね、おかあちゃん、ご、は、ん。」
とうとう夏樹は安江をひっぱりおこしたらしい。
「まって、まって。夏樹、顔洗うからさ。」
しゃがれた安江の声にちゃぶ台の前の音枝たちはほっとして顔を見あわせる。夏樹は洗面所までついてゆくらしく、だんだん声を遠のかせながら、
「ね、野菜サラダもあるよ、おさしみもあるよ。お豆腐のおつゆだよ。それからね……」
不きげんなときのくせで、茶の間へはいってきた安江は、終始無言でだれにも視線をむけなかった。夏樹がひとり、たわいなくしゃべっているほか、音枝も冬太郎も母にならってだまっている。こんなときの飯のまずさは、食べただけずつ気が重るほどだった。