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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
それをお前、不潔なんてかんたんにいえるかね。だから、愛情なんてものを、大せつにしてくれっていうのよ。かわいそうじゃないか浜ちゃん。――浜ちゃんというより、女全体がよ。男と女のほんのたわむれの結果でさえ、女は大きな大きな犠牲を払わなくちゃならないんだもの――」
月の光が安江の両の目に宿り、ころころところがっておちた。冬太郎もしんみりしていた。やがて彼は夜露にぬれる母を案じるように、
「おかあさん、そろそろ帰ろうか。」
「そうだね。」
と、安江はあたりを見まわした。さっきごろまでちらほら見えていた人かげもみえなくなり、川をへだてた原っぱをつなぐ橋の上をごうごうと渡ってゆく電車までが、夜ふけた感じであった。珍らしく客がまばらなせいだろう。月はいよいよ高く小さく、もやがかかったような光の下にひろがったバッケの原のすすきのくさむらも、しずくにぬれたように葉がたれている。冬太郎は母の両手をひっぱって立たせてやりながら、
「おみやげにすすき、折ってかえろうか。」
安江はそれに首をふり、
「やめとき、まだ穂が出てないもの。来月まで待つんだね。」
「お粗末にしない愛情!」
ちょろっと舌の先を出す冬太郎に苦笑しながら、それでもきげんよく、