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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
そして何の反響もなくひと月がすぎた。そんなある日、新聞の三面のかたすみに現われた小さな記事は、音枝を仰天させてしまった。彼女は安江の部屋へとびこんでゆき、ふるえる手でそこをさし示した。
「ええーっ。」
安江もおどろいて見入っているそこには、「失恋娘自殺未遂」の見出しで、目黒区上目黒に住む宮川はま子がアドルムをのんで重態だと報じてあった。安江は大きく、ふーんとうなるようなためいきをした。
しかし、ものの五分もたつと、安江はもうどっかとすわっているような落ちつきをみせ、その新聞から目黒の番地を手帳にかきこみ、
「さてと、じゃあおかあさん、出かけるからね。したくしてるうちに、家中のあり金全部かき集めておくれ。貯金も出してきて。」
「はい。」
「いくらぐらい、ある?」
「さあ、冬坊のもいれて、いいとこ五千円ね。」
「貧乏だね。」
音枝は自分と夏樹のからっぽの貯金通帳をつらく思いうかべながら、
「わたし、都合つけてくるわ。」
こんな場合にいつも助けあう仲間が四五軒あった。自転車でまわれば五千円位はできると思ったが、安江はそれをとめた。
「めんどうだよ。それより、わたしの原稿料をとってきておくれよ。