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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
「おかあさん、どうします。御飯できてるんだけど。」
それは兵六さんへも気を配ってのいい方だった。
「じゃあ兵六おじさんに、さき食べてもらいなさい。遠いんだから。」
そういって部屋を出てゆかなかった。音枝はすぐ広縁で一ぷくつけている兵六さんに、
「おじさん、何もありませんけどごはんが出来ましたから先き食べてくださいな。おそくなると困るでしょうから。」
「なに、一しょでいいよ。一しょでな。」
「でも、待ってるときりがありませんのよ。おとうさん、いつ帰るかわかんないんですもの。」
「そんならそれでもよろしいがな。」
そういって、さっきからの続きの灰ざらいじりをやめようとしない。この家の客たちの吸い残しのタバコをたんねんに拾って吸っているのだ。中には口紅のついたのさえあった。音枝はたまりかねて、
「おじさん、タバコとってきますわ。」
そして安江の部屋へゆき、腰をかがめてささやいた。
「兵六さん腰すえてるのよ。おかあさんきて、そういってよ。」
舌うちをしながら安江は出ていった。兵六さんはよごれた灰ざらを前に並べて、吸がらの一つ一つをつまみあげては左の指先で灰のよごれをはじきおとしていた。