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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
悪いことなんかしないやい。」
「夏樹ちゃん、だまって遊びにいったりするから、どろぼうがはいったじゃないの。」
夏樹ははっとして泣くのをやめ、あたりを見回した。音枝は繃帯をしてやりながら怒った声で、
「浜ちゃんのトランク、とられたのよ。」
夏樹は、ああ、それかと思い、それなら――といいそうになったのをのみこんだ。いえばヒミツカのピストルもばれると思い、ばれれば、せっかく手に入れたピストルもたちまち没収のうき目を見なければならない。夏樹はついいいそびれてしまった。そのことはまた夏樹の小さい心をヒミツカと離れさせず、彼の目は窓ごしにヒミツカのくさむらばかりみていた。もしもだれかがそこを通りはしまいか。そしてみつけ出しはしまいか。それはまた何よりもはっきりと、夏樹の気持をさらけ出していた。音枝はもうそれに気がついていた。例によってあとでそれとなく聞かずばなるまいとは思ったが、どろぼう事件はいつものように事を運ばせなかった。あんまり遊びすぎるといって冬太郎をせめたり、もうすぐ八つになるくせに、留守番もしてくれなかったと夏樹にくどくどと文句をいってはみても、はじまらないことだった。