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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

「浜ちゃん、門しめないで、おとうさんまだなのよ。」

すると思いがけない文吉の声で、

「おれだよ。」

「あら、おとうさん、かぎかけないで。」

がっかりして式台に腰をおろしていると、声でわかったらしく安江も出てきた。

「なんだこれ、なんのまじないだ。」

柳の枝を払いのけるようにしながら文吉は敷居をまたぎ、音枝のかっこうに、

「どうしたんだ。」

「柳で、目をしぶかれたの、つい忘れてて。」

「大丈夫かい?」

と、安江ものぞきこみながら、

「兵六さんがきましてね、節句だというので、小豆島流に桃と柳を飾ってくれたのよ。」

不きげんにいう安江に、文吉は文吉で、やはり一種の不きげんさをふくめて、

「珍らしい人がきたね。何の用事で?」

「あなたにあって聞いてもらいたいことがあるんですって。」

安江が小声になったので、くつをぬぎかけていた文吉は思わずふりかえり、やはり小声で、

「まだいるのか?」

「ええ。それがもとで、てんやわんやなの。」

そのとき安江はふとものの気配を感じてガラス戸に目をやった。風もないのに柳の糸がゆれたと思ったのだ。おりて戸をあけると、いきなり柳の枝にほおをなでられた。