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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

こりるといい。私は赤ん坊の世話なんかしないから……

にぎやかな電車通りを歩きながら安江はひとり興奮していた。

物心ついて以来、いつも背中に赤ん坊をくくりつけられていた少女、おしめの洗たくでヒビをきらしていた可哀そうな小さな手、子もり娘はかけまわる遊びを禁じられている。それを忘れてなわとびをして、背中の赤ん坊がとび出してしまったこともあった。主家の赤ん坊のおでこに大きなこぶをつくって、それでお払い箱になった子もり娘は、家へ帰ると、ひどくしかられて、よその赤ん坊にけがをさせた同じおでこに母からひどくゲンコツをくらわされた。思い知れというのであった。ゲンコツのあとは紫になってはれた。そこへ富山の即効紙をはってくれた姉。――

その姉が兵六さんとかけおちをしたよしのである。思い出がそこへつながると、安江の興奮はいつか涙っぽくなっていった。よしのが生きていたら――とふと思う。そしたら、こんないやな思いのとき、まっさきにとんでゆけるのに私はゆくところがない。――ああそうだ。よしのが生きていたらば、よしのはその子供を育てるにちがいないから、私はとんでゆく必要はないのだった――もう帰ろう。