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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
貧しい百姓女の母ごころが、貧しい都会生活で米も買いかねる安江の心にじかにふれてくる。そのことはまた、母ごころを注いでくれる人をなくしている赤ん坊への憐憫ともなって安江の心をなごめもした。
――もしもこの子が、わたしの産んだ子だったら……
そしたらたとえもっと貧乏だからとて手放すことは出来ないのだ。
安江は夫のきげんのよいときにいってみた。
「わたし、なんだかこの子、可哀そくなってきた。育ててやろうかしら。」
「いやだよ、おれは。」
「はくじょうね。品物のつもりであずかったの。」
あれからもう半年たっていた。月末ごとに兵六さんは、何かしらいいわけを書きつらねた手紙と一しょにミルク代を送ってよこした。六円五十銭の粉ミルクを一と月に三かんあけて十九円五十銭である。それに対して二十円ずつおくってくるのだ。
「五十銭が、私たちの一か月の子もり賃かしら。」
あまりの仕打ちに腹立てていってはみるものの、今ではもう愛情に変りつつあるものを、金にかえようとしているように思えて、あと味がわるい。しかし、いくら何でもこのままでは赤ん坊が可哀そうである。そろそろおもちゃも買ってやらねばなるまいし、着換えも必要だった。