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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

」

「当りっこないわ。」

音枝はにやにやしながらすぐ台所へゆき、ガスにやかんをのせている。

「と、おっしゃるところをみると、うどん粉やなんかではなさそうだね。もっと高級品かな。ケーキでも手に入りましたか。」

帯をときながら安江もきげんがよい。音枝はそれをわざとじらすように、

「ま、おとなしくお茶がわくのを待った方がいいわ。当ったら特配のかわり、当らなかったら配給停止ですからね。」

「おやおや。よっぽどいいものらしいね。」

「そうよ。おとうさんがにくらしいほど。」

「え、なんだって?」

ちゃぶ台の前にあぐらをかいている文吉がにやにやしだすのへ、音枝はわざとぴしっとした声で、

「おとうさん、いっときますがね、男女同権ですよ。平等分配よ。その上で、いろいろやりくりしましょうね。ゆびきり。」

こいつめ! といいながら文吉は一たん出した小ゆびをまた引っこめ、

「よし、おとうさんがあてようか。タバコだろう。」

「お見当ちーがい! タバコでお茶がのめますか。さ、大急ぎで取消さないと配給停止よ。」

ちぇっ! と再び小ゆびを突き出すのへ、音枝はきゃっきゃっと笑いながらじぶんの小ゆびをからめ、