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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
よ。」
「…………」
「へやを貸せって。三畳でも米代ぐらいにはなるってよ。」
「大きにお世話だよ。まったく、兵六さんがくると、ろくなことが起らないんだから。」
安江はぷりぷりした。
そしてその翌日――。
「ごめんください――」
安江が出てゆくと、見知らぬ少年が立っていた。十七か、よくいって八ぐらいに見える。
「ぼく、斎木です。」
にこにことして頭をさげる。安江はけげんな顔をして、
「斎木さんて、あの、失礼ですがどなたでしたかしら。」
すると、今度は斎木という少年の方がけげんな顔をし、
「ぼく、高松の斎木進です。」
「ああ、高松の――」
とはいったものの、安江に心当りがあったわけではない。ただ小豆島とのつながりで高松を身近に感じたまでで、目の前に立っている少年との関係をさぐりだそうと、とっさの努力をしていた。少年はかたくなって、腰の手ぬぐいをとってはしきりと額の汗をふき、また腰にはさませながら、だまって安江の言葉をまっている様子だった。
「で、何か?……」
「はい、このたびは、お世話になります。」
ぴょこんと頭をさげて、また腰の手ぬぐいをつかんでいる。可愛らしい少年だった。