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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

「でも、進君のはひどいわよ鷲さん、進君には悪いけどさ、困るのよ。文吉、おこってるわよ。」

「そういわれるとどうも。しかし、これも同郷のよしみに、かんべんしてくださいよ。その代り、赤ん坊のミルクでもなんでも、これからもってきますよ。文吉さんに一つとりなしてくださいよ。」

そしてほんとにそのあとしばらく、兵六さんはせっせとミルクを運んできてくれた。

しかし、まもなく食糧統制違反で新聞にも出るなどやみ屋なりのはなやかさでうわさにのぼるようになって以来、兵六さんの足はだんだん遠のき、やがてぱったり来なくなってしまった。

「警察につかまったりして、はずかしいのかしら。」

音枝がそういうと、文吉は文吉で、

「警察にあげられるったって、それほどのやみ屋じゃあるまい。おれはそう見てる。大きそうなこといっても兵六さん、せいぜいかつぎやぐらいのやみ屋だよ。だって、二千円ぐらいの金を、かしてくれっていったもんな。」

「それ、かしたの?」

安江が顔色をかえる。

「かしたさ。お前の姉婿だった人だと思ったからさ。」

「かえしてくれた?」

「二百円だけね。利子の前払いだっていってさ、その場で差し引いてくれたよ。