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ざっきょかぞく

雑居家族

壺井 栄

「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页

青空文庫

」

夏樹は素直に、

「こんちわ。」

ぴょこんと頭を下げはしたが、そのつづきでとび出していった。手で口を押えながら。

みんな笑いを押えているらしかった。台所でこそこそというざわめきがあるのに、なかなかお茶が出てこない。年がいもなく音枝までがと、少し腹を立てた安江は、ぽんぽん手をならし、

「音枝……音枝……」

すると夏樹がかわって、

「おねえちゃん、お茶菓子買いにいった。」

そしてくっくっと笑うのである。

「浜子さんは。」

「いる。」

「なにしてるの。」

「笑ってる。」

そしてまたくっくっと笑う。

「しようがないね、ほんとに。若い者にかかっちゃあ、兵六さん、ワヤじゃ。――浜ちゃん、いいかげんにしてお茶ちょうだい。」

しかし浜子は現れず、かわりに夏樹が茶盆をもってはいってきた。足のことはすっかり忘れはててにやにやしている。安江に盆をわたしながら、

「ね、浜子さんね、笑っておなかが痛いんだって。鷲なんてもうおかしくないってよ。今は兵六の方がおかしいんだって。」

そして自分もげらげら笑いながら、そんなことで急に親しみを感じているらしく、

「おじさん、兵六って、ほんとの名前?」