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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
そしてね、どっかの事務員でも世話してくれるかと思ったのに、ここのおばさんて、ずい分不親切だってよ。幻滅をかさねるばっかりだって。」
安江は声を立てて笑い、
「まあいいよ、いいよ。とにかく、こうなった以上は、うちに落ちつけるように仕むけてやらないと、ほんとに飛び出されたりしちゃあ、困るからね。」
そして呼名も他人行儀なさんづけではなく、浜ちゃんと呼ぶことにしたのだった。夏樹には浜子ねえちゃんと呼ぶようにいいわたしたが、彼はなかなか聞き入れない。おとななみの呼び方で、
「浜ちゃん、水くんで。」
食事の時、音枝にいうのと同じ調子でいう。浜子はすぐ反ぱつして、
「水ぐらい自分でくみなさいよ。」
「なんだア、水道に近いくせに。」
「あんたの女中じゃありませんよ。」
音枝がさっと立とうとするのを安江はかた手で押えるようにしてとめ、
「夏樹、じぶんでくみなさい。」
それは、これまでになかったふんいきだった。
浜子はだれの許しもなしに音枝のことをおねえさんと呼んだ。それは親しさや尊敬の念からというよりも、年上だということから便宜的にそう呼んでいるだけのことで、もしかしたらおねえさんと呼ぶことで、この家における自分の地位を音枝と同じ線におこうとしているようにも見えた。