轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ざっとう

雑沓

宮本 百合子

「中央公論」1937(昭和12)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,832 字 · 50 页

青空文庫

今晩は、宏子のその眼の裡に苦しげな色がある。

ノートや辞書がきちんと整理され、デスクの向板のところには高校の時間表を細長い紙に書いて貼りつけてある有様を宏子はしげしげと眺めていたが、

「順ちゃんは几帳面だなあ」

と、歎息と感服とを交えたような声で云った。そして、

「ね、順ちゃん」

弟の顔を見上げ、訊ねた。

「あなた何故寄宿へ入らないの?」

順二郎は、体の大きさに合わしてどっちかというと子供っぽすぎて見える柄の紺絣の膝をゆすりながら、

「――家から通えるんだもん」

「そりゃそうだけどさ――順ちゃんは寮生活をして見たいとは思わない」

「特別やって見たいとは思わない」

宏子は暫く黙って、自分の断った髪のうしろを撫でていたが、

「私はそとへ出てよかったと思う」

はっきりとした調子で云った。

「自分が生れて、育って来た中にばっかりいたんじゃ、そこがどういうところか見えないもん――私はその点で大変よかったと思ってるわ」

宏子の顔に、幾分遠慮がちな、しかし知りたい気持を制しかねる表情があらわれた。

「順ちゃんのようなひとは、これまで一遍も家から出たいなんて思ったことはないのかしら……ここの生活がそんなに自分と調和してる? そこが私には不思議なの」