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ざっきちょうより(に)
雑記帳より(Ⅱ)
寺田 寅彦
「文学」1934(昭和9)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,473 字 · 9 页
朱色の罌粟や赤椿などは前者の例であり、紫色の金魚草やロベリアなどは後者の例である。一体に朱赤色や濃黄色といったような熱色の花には単調な色彩が多くて紫青色がかったものや紅でも紫がかったものにはこうした色のかがよいとでもいったものがあるらしい。柱作りに適するローヤル・スカーレットという薔薇がある。濃紅色の花を群生させるが、少しはなれた所から見ると臙脂色の団塊の周囲に紫色の雰囲気のようなものが揺曳しかげろうているように見える。
人間の色彩といったようなものにもやはりこうした二種類があるように思われる。少なくも芸術的作品はそうであるし、またことによると科学的な仕事にもいくらかそういう区別があるような気がする。物理学の方面だけで見ると一体にドイツ学派の仕事は単色で英国派の仕事には色彩の陽炎とでもいったものを伴ったものが多いような気がするが、それは唯そんな気がするだけで具体的の説明は六かしい。
三
人間の個性の差別が実に些細なことにまで現われるという一つの実例をついこの頃見付け出した。ある研究所の廊下に所員の姓名を記した木の札が掛け並べてある。