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あめ
雨
織田 作之助
「海風」1938(昭和13)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,261 字 · 44 页
それで最初何か自信のなさから来る謙遜めいたものを豹一に見ていた者も、否応なしに傲慢だと思わされた。
やがてクラスの者に憎まれた。しかし彼の敵愾心は人々を最初から敵と決めていたから、憎まれてかえってサバサバと落着いた。美貌に眼をつけた上級生が無気味な媚で近寄ってくると、かえってその愛情に報いる方法を知らぬ奇妙な困惑に陥った。
ずっと首席を続けて三年生になった。ある日の放課後、クラスの者たち全部からとりまかれ、点取虫のくせに生意気やぞと鉄拳制裁をされた。三十人ほど相手に奮闘したが、結局無暴だった。鼻血をふきだしながら白い眼をむいていた。鼻の穴に紙きれを突っ込んだ妙な顔を職員便所の鏡にうつしてみて、今に見ろと叫んだ。それから十日ほど経ち、学期試験が始った。泡喰って問題用紙にしがみついているクラスの者の顔を何とあさましいと見たとたん、いきなり敵愾心が頭をもたげて、ぐっと胸を突き上げた。ざまあ見ろと書きかけた答案を消し、白紙のままで出し、胸を張って教室を出た。はじめてほのぼのとした自尊心の満足があった。落第した。
二度目の三年の時、教室でローマ字を書いた名を二つ並べ、同じ字を消して行くという恋占いが流行った。