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あめ

雨

織田 作之助

「海風」1938(昭和13)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,261 字 · 44 页

青空文庫

警察から呼出し状が出て出頭したということだった。三日帰ってこなかった。何のための留置かわからなかったが、やつれはてて帰ってきたお君の話で、安二郎の脱税に関してだとわかった。それならば安二郎が出頭しなければならぬのにと豹一は不審に思った。だんだんに訊いてみると、安二郎は偽せの病気を口実にお君を出頭させたのだとわかった。そんなばかなことがあるかと安二郎に喰ってかかると、

「生意気ぬかすな。わいが警察へ行くのもお君が行くのも同じこっちゃ。夫婦は一心同体やぜ」

子供にいいきかすような口調だった。

「そんならなぜお母はんに高利の金を貸すんです?」

と、豹一が言うと、

「わいに文句あるんやったら出て行ってもらおう」

母親もいっしょにと思ったが、豹一はひとりで飛びだしてしまった。出て行きしな、自分の力で養えるようになったらきっと母を連れに来ますと、集金人の山谷に後のことを頼んだ。かねがね山谷はお君に同情めいた態度を見せ、度を過ぎていると豹一は苦々しかったが、さすがに今はくれぐれも頼みますと頭を下げた。便所でボロボロ涙をこぼした。そして、泣いて止めるお君を振りきって家を飛びだした。