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あめのひる

雨の昼

宮本 百合子

「中央公論」1939(昭和14)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,119 字 · 9 页

青空文庫

さア、早く、ケーニッヒさん、タクシーを大至急。と娘を押し出してコルベット卿がロンドンを出るのを止めさせにやる。こういう場面で、私たちのまわりの現実にありふれた年寄りは、マア、お前、店だってこんなに流行っているのに今更何も云々とか、もう年ごろの娘がいるのにとか、とかく云うであろう。ジェニファーの立場にいる女は、こうして多くの場合二面にぶつかるものをもたなければならない。それにひきくらべて、と、日本の女のひと、特にジェニファーに近い年ばえの女のひとが、この映画の祖母のわかりよさを愛すとすれば、そのことのなかに、一言にしてのべつくされない今日の女の生活にたたまれている感情のかげがあるわけである。

でも、私は、このお祖母さんだっていくじがないと思う。物わかりがいいところまで行っていてくれはしないと思う。イレーネの心に入ってきいてみれば、母の新しい良人に感じる憎悪を、お祖母さんが只一くちに利己主義だと云っているのをもしきいたとしたら、どんな悲しさに号泣することだろう。大人の世界の思いやりなさを憎むだろう。イレーネにすれば、利己主義と名をつけられて、承知出来るような心の動機で、気が狂わんばかりになっているのではない。