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あまつぶ
雨粒
石原 純
「新短歌」新短歌発行所、1939(昭和14)年11月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,485 字 · 5 页
放射線をつくっているα粒子だとか電子だとかは、どんなに小さなものであるかは、物理学ではっきりわかっている。そんな眼に見えぬ小さなものの通路を写真に見せるなどと云うことは実に驚くべきことだと思われる。そこで普通にはとても正体のわからないと考えられる事柄でも、何かの工夫をしてせめてその輪廓をでも明らかにすると云うことが、このウィルソン霧箱のように出来たなら、実にすばらしい事ではあるまいか。
雨粒を見ながら私はこんな事をいろいろ考えていた。この頃のように世間の人心が何かしら不安に襲われているときに、衝撃につき当るまでぼんやり待っていると云うだけでは、まことに心細いものである。
それから今ではどこの学校にも試験があって、試験間際になると、学生が頻りに頭をなやますのであるが、これもちょうど雨粒の大きさを吸取紙に滲ませるようなもので、そんな事をしないで、ふだんから何かもう少し賢明な方法で学力を検べるようにするのが近代的な教育であると私は思う。雨粒の身になって見れば、足許に吸取紙が見えてから急に騒ぎ出したって、本当に眼のある人から見られたら、それはいかにも愚かな仕業にうつるであろう。