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ゆきのうえのおじいさん
雪の上のおじいさん
小川 未明
「童話」1922(大正11)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,520 字 · 14 页
「それは、ほんとうにお世話さまでした。さあおまえは、こちらへおいで。」と、母親は、おじいさんに礼をいいながら、子供の手を引っ張りました。
「さあ、お母さんとゆくのだ。」
おじいさんは、目に涙をためて、子供を見送りながらいいました。
子供は、振り返りながら、母親に連れられてゆきました。そして、その姿は、だんだんあちらに、人影に隠れて見えなくなりました。おじいさんは、ぼんやりと、しばらく見送っていましたが、もういってしまった子供をどうすることもできませんでした。また、いつかふたたびあわれるということもわからなかったのです。
おじいさんは、自分の用事のことを思い出しました。そして、また自分のゆくところをたずねて、町の中をうろついていました。ちょうど、年寄りのまい子のように、おじいさんはうろうろしていたのであります。
「ああ、今日は、もう遅い。それに降りになりそうだ。早く、村へ帰らなければならん。」と、おじいさんは思いました。
おじいさんは、また、自分の村をさして帰途についたのであります。途中で、日は暮れかかりました。そして、とうとう雪が降ってきました。
それでなくてさえ、目のよくないおじいさんは、どんなに困ったでしょう。