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ゆきのひ

雪の日

近松 秋江

「趣味」1910(明治43)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,365 字 · 17 页

青空文庫

……私には男だけにだいぶあるよ」

「ああ、そうそうそれからこんなことがまだありました」

女はだんだん往昔の追憶が起ってくるというように、自分の心の底に想い沈んでいるというようであったが、自分の話に興を感ずるといったようにこう言った。

「私は別に縹致といっては、そりゃよくないけれど、十七八から二十ごろまでは皮膚の細かい――お湯などに行って鏡の処に行って自分でもどうしてこう色が白いだろうと、鏡に向いて自分でも嬉しいようで、ツト振返ってお湯に来ている人を見廻すと、皆な自分より色は黒い。そう思うと――若い女というものはおかしなものですねえ。――そう思うと自惚れるんです。その時分は、私はそりゃお洒落でしたから。――皆なしばしばスマちゃんくらいお洒落はないと言い言いしたくらいです。

すると、――あれはいつでしたか、何でもお母さんと私と神楽坂の傍の軽子坂の処に隠居していた時分です。

あれはちょうど私が二十歳の時分でした。春の宵の口に、私独りでお湯から帰ってくると、街の角の処で、どこの男か、若い男が突立っている。こっちは誰か知らないのに、先は私の名を知ってて『おスマさんおスマさん』