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ゆきをつくるはなし
雪を作る話
中谷 宇吉郎
「東京朝日新聞」1936(昭和11)年9月17日、18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,931 字 · 6 页
いずれにしてもこの雪の結晶は、高層の極めて温度の低い所で水蒸気が凝結して出来るものには違いないのだから、その真似をすれば良いわけである。最初には銅板の円筒の長さ一メートル位のものを作ってそれを冷して置いて、上から水蒸気を吹き込んで見た。しかしそれ位のことではなかなか雪は降らない。最初の冬はそんなことを試みている中に明けてしまった。次の冬にはもっと小型の銅箱を作って、それを内部から液体空気で零下二十度位まで冷して置いて、その上に暖い水蒸気を送って見た。完全な六華の結晶は一応見切りをつけて、先ず結晶の幾つかの枝をこの銅板の面から伸び出させようというつもりなのである。出来たものは、寒い朝硝子窓に凍りつく霜の花のようなものばかりで、空中に伸び出る結晶の枝はどうしても出来ない。その中に第二の冬も見る見る過ぎ去ってしまった。
こんな事をしている中に、やはり雪のようなものは天然にこそ全く無造作に出来るものであるが、人工的に作ることはなかなか困難な仕事であろうという気がして来た。それには実験室内での失敗ということ以外に、その頃から行き始めた十勝岳での体験も原因するのである。