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ゆきわりそうのはな

雪割草の花

石川 欣一

「家事と衛生」家事衛生研究会、1927(昭和2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,583 字 · 6 页

青空文庫

もともと数えるぐらいしかなかったのだから、四、五日目には、一つか二つになってしまった。毎朝、私は雪割草の鉢を間にして、女房とけんかをした。

「おまえ、またゆうべ忘れたな」

「忘れやしません。ちゃんと入れときました」

「だって、また一つ減ってるぞ」

「でも、ゆうべだってしまいましたよ」

「ほんとうか」

「あなたは酔っぱらって寝てしまうから知らないんです」

「ばかなことをいえ」

「そんなら自分でおしまいなさい」

「やかましい!」

*

ある朝、例の通り寝坊をして、目をこすりこすり起きた私は一年半になる私の長女が、雪割草の鉢の前にチョコンとすわって、口をモガモガさせているのを見た。わきへ行くと、くるりと横を向いて、いきなりチョロチョロ逃げ出した。二足三足で追いついて、

「陽ちゃん、なにを食べている?」

と聞くと、いつでも悪い物を口に入れて発見された時にするように、アーンと口をあいて見せた。みがき上げた米粒のような歯に、雪割草の赤い花片と黄色いしべとがくっついている。紛失事件の鍵はきわめて容易に見つかった。陽子が毎朝、おめざに一つずつ食っていたのである。

*