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ゆきま
雪間
久生 十蘭
「別冊文藝春秋 第五十六号」1957(昭和32)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,817 字 · 24 页
当時の積雪量は大体、十センチ程度で、通行が困難だというようなことはなかった。私の見解ですが、滋野さんは泥酔して運転していたのではないでしょうか。軌跡が常規を逸している。じつにどうもシドロモドロなんで、そんな失礼な想像をしたわけですがね」
「滋野は朝の八時から泥酔するような習慣は過去にはなかったようです……それで、署長さん、笠原の細君は証拠とするものがあって、そんな主張をしているのでしょうか」
署長は笑いながら首を振った。
「いや、なにも……かならず、誰かに殺される。だが、その人の名は言えない……笠原さんの奥さんは、滋野光雄が殺されたから、こんどは私の番だというようなことを言われる。滋野が殺されたら、なぜ笠原さんの奥さんが殺されなければならないのか、その辺の連帯関係について、なにかお気づきの点がありますか。参考までにおたずねするのですが」
「格別、これといって」
「笠原さんの奥さんは若草みどりという映画女優で、滋野光雄とおなじ撮影所で働いていたそうですが、あなたはその頃から二人とお知合いだったのですか」
と急にむずかしい話になってきた。
滋野と自分を掛けあわせて考える以上、安芸子の恐れている意想の人物は笠原忠兵衛なのにちがいない。