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くものわくころ
雲のわくころ
小川 未明
「小学六年生 5巻6号」1952(昭和27)年9月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,198 字 · 11 页
「いい景色ですね。」と、勇吉は、あたりを見まわしながら感歎しました。
「ほら、ごらん。あのがけのところに、やまゆりが咲いているから。」と、おじさんが、いったので、そのほうを仰ぐと、頂上から、ほそい一すじの滝がおちて、そのしぶきを、あびながら、白い花が咲いていました。
かれは、自分の家の庭に咲いている、やまゆりを思い出しました。
目を転じると、あぶなげな岩鼻に根をおろした、松の木がありました。同じ松ながら、あるものは、安全な平地に根をおろしているし、こうして、たえずおびやかされるものもある。どちらが、はたして幸福だろうかと考えたりしました。
たとえば、雪や、あらしと戦い、けっしてまけずに、昼は小鳥の声を聞き、夜は雲間の星と語るこの松を、どうして、不幸といいきれるだろうかとも思いました。
「勇ちゃん、おべんとうを食べようよ。」と、おじさんは、つつみを開きはじめました。ゆで卵や、やいた魚や、酒のびんなどが、出てきました。
おなかが、すいていたので、勇吉は夢中で食べていると、その間に、おじさんは、用意してきた、釣りざおのひもを解き、あゆを釣る準備をしました。