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くものこみち

雲の小径

久生 十蘭

「別冊少年新潮」1956(昭和31)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,634 字 · 33 页

青空文庫

「あゝ、死んだんでしょうね。たいへんなスキャンダルだったから、社会的に、死んだも同然です……それはそうと、ダグラスのことなら、ご心配はいりませんですよ。雲がこっちへばかり、たぐまっちまって、えらくゴタゴタしているから、これから雲の中の道をさがすつもりなんです……空にだって、抜裏もあれば露路もあるってわけで、その辺のところは、心得たものですから、安心していらしてください」

ひとりでしゃべりまくって、操縦室へ帰って行った。柚子は桜間の行ったほうを眼で追いながら、

「あんなひとが出てくるようじゃ、この飛行機は、まず、落ちるときまったわね。あんなバカが操縦士をやっていると知ってたら、日航なんか、乗らなかったわ」

そういうと、いきなり、すり寄ってきて、白川の首に腕を巻きつけた。

「でも、白川さんに絡みついて死ねるなら、本望よ」

白川は柚子の腕を払いのけながら、

「よしてくれえ。女っ気はいやだといったろう。そんなことをすると、ほんとうに飛行機が落ちるぜ」

と手きびしくやりつけた。柚子は照れるようすもなく、

「まあ、ひどい。いくら女を馬鹿にしてるたって、もうすこし、人間らしい扱いをするものよ。