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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

殊に人々を驚かせたのは、稲田屋の近くの高い櫓の上に、ズブ濡れとなっていた北鳴四郎が何の被害も受けなかったことだった。人々はたしかに幾度となく、櫓の上にピチンピチンと音がして、細いは細いながら閃光がサッと舞い下りるのを目撃した。あのとき櫓の上に人間が居たとしたら当然雷撃を蒙ったろうと思われるのに、町の客人、北鳴四郎が平然としてあの高櫓の上に頑張っていたとは、まるで嘘のような話だった。

夜に入って、北鳴は稲田屋の惨事を見舞いのために、人々の集っているところに訪ねてきた。そして二つの白い棺の前に恭しく礼拝したのち、莫大な香奠を供えた。彼がそのまま帰ってゆこうとするのを、人々はたって引留めた。そして口々に、彼の幸運話を聞かせてくれるようにと無心したのだった。

「私のことなら、別に不思議はありませんよ」と北鳴は云った。「避雷針を持っている者は、誰だって、ああいう風に平気で安全でいられますよ。但し、これだけはハッキリ申して置きますが、避雷装置は完全でなければならないということです。先日、私はこの町で、恰好だけは仰々しく避雷針の形をして居り、その実、一向避雷針になっていない不完全避雷針を見ました。