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かみなり
雷
海野 十三
「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页
本当に分ったのは、小学校の先生と、そして年のゆかぬ中学生ばかりだったといってもよいくらいだった。
そのときだった。外から大きな花束を抱いて入って来た二人の男女があった。
「まあ皆さん、すみませんわネ。亡くなった両親のために、こんなにお集りいただいて……」
と、二十五、六にもなろうという楚々として立ち姿の美しい婦人が挨拶をした。筆で描いたような半月形の眉の下に、赤く泣き腫れた瞼があって、云いは云ったが、その心の切なさをギュッと噛んだ可愛い唇に辛うじて持ち耐えているといった風情だった。この女こそは噂の主、今は亡き稲田老夫婦の遺児お里に外ならなかった。――奥のかた霊前では、既に立ち去ろうとした北鳴四郎が、ばつの悪そうな、というよりも寧ろ恐怖に近い面持をして、落著かぬ眼を四囲にギロギロ移していた。
6
「奥に四郎さんが来ていますよ」
と、お里に注意をした者があった。
「まあ、四郎さんが……」
その昔の情人、北鳴四郎がこの町に帰ってきているとは、予て町の人々からうるさいほど噂には聞いていたが、思いがけなく、この奥に四郎が居ると聞かされて、お里は吾れにもなくポーッと頬を赤らめた。