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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

「えッ……」

といって二人は顔を見合わせた。

「どうです。御存知ありませんかナ」

と紳士が重ねて尋ねると、そのうちの一人が、ひどくおんぼろな衣服の襟をつくろいながら、オズオズと口を開いた。

「ええ、松吉というのは、儂のことですが、そう仰有る貴方は、どなたさんで……」

「ナニ、あんたが松吉さんだったのか。これは驚いた」と、紳士はギクリと身体を顫わせた。「もう忘れてしまったかネ、こんな顔の男を。……」

そういいながら、紳士はポケットから紙巻煙草を一本抜きだして口に銜えると、シュッと燐寸を擦って火を点けた。

赤い燐寸の火に照らしだされた不思議な紳士の顔を穴のあくほど見詰めていた松吉は、やがて大きく眼を見張り、息をグッと嚥むようにして叫んだ。

「ホウ、立派になってはいるが、お前さんはたしかに北鳴四郎……。もう、七年になるからナ。お前さんがこの町を出てから。……」

北鳴と呼ばれた紳士は、感激深げに、しきりと肯いた。

「そうだ、七年になる。あのとき僕はちょうど二十歳だったからネ」

「……しかし、よくまアそんなに立派に出世をして、帰って来られて、お目出たい。……それに引きかえ、儂のこのひどい恰好を見て下さい。