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かみなり
雷
海野 十三
「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页
「それくらいのことは何でもない、もっともっと、用を云いつけて下され。何しろ町の名誉にもなることじゃから……」
と、町長は手を取らんばかりに、北鳴四郎に厚意を寄せるのだった。すべては昨夜、町長のところに贈った思いがけなく莫大な土産品のなせる業だった。
北鳴は、町長の言葉が信じられないという風に、わざと黙っていた。
そのとき松吉は、傍にある真新しい半鐘梯子を指して、北鳴に云った。
「これを御覧なすって。これがこの一年間、儂にさせて貰った只一つの仕事なんで……。こういう具合に、町の奴等は、儂に仕事を呉れねえで、虐待しやすで……」
と、町長の方をグッと睨んだ。すると町長は、俄かに笑顔を引込め、松吉のいったことが聞えぬげに空嘯いた。
「おお、これが松さんの仕事かネ」と北鳴は、梯子を下の方から上の方へ、ずっと眼を移していったが、そのとき何う思ったものか、カラカラと笑いだした。
「……何を笑うんで……」
「何をって、君……」と、北鳴はまたひとしきり笑い続けたのち、「……梯子の上にある避雷針みたいなものも、松さんの仕事かネ」
「もちろん、儂がつけたんだが……あの雷避けの恰好が可笑しいかネ」