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でんきかんばんのしんけい

電気看板の神経

海野 十三

「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,480 字 · 29 页

青空文庫

恐らく顔や身体の割には、ずいぶん年齢をとっているのじゃないかと思われた。今のところ、岡安も春ちゃんのことは、夢のように忘れちまったらしく、鈴江と肝胆相照している様子は、側から見ていて此のような社会の出来ごととしても余り気持のよいことじゃなかったのである。

「すうちゃん。けさ、ふうちゃんが殺された時間は、いつ頃だったの」

「さあ、よくはわからないけど、二時と三時との間だという話よ。どうしてサ」

「じゃ二時二十分――たしかに、あれだ」と岡安は急に眼を大きく見開いたまま、ふるえる細い手を額の上へ持って行った。「すうちゃん、このカフェは呪われているんだよ、君も早くほかへ棲かえをするといい。僕は見たんだ。たしかに此の眼で見たんだ、しかも時刻は正に二時二十分――丁度ふみちゃんが殺された時間だ」

「オーさん。あんた知ってんの、言ってごらんなさい。言ってよ、なにもかも、さ早く」

「いや、怖ろしいことだ。君、このカフェ・ネオンの三階に懸かっている電気看板は、ただの電気看板じゃないんだぜ。あいつは生きてる! 本当だ、生きてる。あの電気看板には人間の魂がのりうつっているのに違いないんだ。