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でんきかんばんのしんけい
電気看板の神経
海野 十三
「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,480 字 · 29 页
あの電気看板には神経があって、人間の殺されるのが判っていたのだ。そして僕にその変事を知らせたのに違いないんだ。あんな怖ろしい電気看板は、今日のうちに壊してしまわなくちゃいけない」
「オーさん、そのことは黙っていた方がいいことよ」とこの話をきいてから死人のように真蒼になっている鈴江が、皺枯れた声を無理に咽喉からはき出すようにして叫んだ。「その話はオーさんの挙動に、ある疑いを起させるばかりに役立つわ。あたいは、なにもかも知っているのよ。たとえば、死んだ春ちゃんとあんたが、密会の打合わせをあの電気看板の点滅でやっていたこともよく知ってるわ。さア今更驚くに当りやしない。春ちゃんは、毎晩十二時になると、あの電気看板のスイッチを切ったり入れたりして、電信のような信号をすると、ご自分の家の屋上でその信号を判断しては、その夜更け、ここのうちの裏梯子から三階の屋根裏の物置へあんたが忍んで来るのだったわネ。電気看板の信号なんかは使わないけれど、其外は丁度このごろ、あんたとあたいが繰りかえしている深夜のランデヴウみたいにネ。まあ、くやしい。どうして忘れるもんか、あの春ちゃんが殺される日、あたいは屋根裏の物置の中に鼠かなんかのように蠢めいているあんた達を見せつけられて、あたし……。