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でんきかんばんのしんけい
電気看板の神経
海野 十三
「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,480 字 · 29 页
金属ほど電気をよく伝えるものはない。それになにをわざわざ、危険きわまる金属を選んで使用するのであるか、警視庁の保安課なんて、一体どんな仕事をやっているのかと言いたくなる。――岡安巳太郎は、色蒼ざめた顔を上下にふり乍ら、よく憤慨したものさ。
岡安の電気恐怖病症状については、この上述べると際限がないので、この辺でよしたい。「俺は電気に殺されるに違いないんだ」と彼は口癖のように言っていたもんだ。その度に春ちゃん――これが例のカフェ・ネオンの女給で「カフェ・ネオンの惨劇」の一花形であるわけだが――から「またオーさんのお十八番よ。そんなに心配になるんなら、岩田の京ぼんに頼んで、いっそ一と思いに、感電殺しをやってもらえばいいじゃないの、オーさんッ」と、尻上りの黄色い声を浴びせかけられていたものさ。この岩田の京ぼん、本名京四郎というのは、カフェ・ネオンから一丁ほど先にある電気商の若主人で、ネオンの新築当時、電燈や電熱器の配線工事をやった関係があって、それからこっち、客になってはウイスキーを舐めに来たり、また出入の電気屋として配電の拡張工事や、問題のネオン・サインの電気看板の取付けにやって来たりなどして、どっちかと言うとカフェ・ネオンの特別客というわけだった。