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れいかん
霊感
豊島 与志雄
「中央公論」1952(昭和27)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,268 字 · 31 页
翌日になっても、彼女はもう昨夜のことなど気にかからず、家庭の仕事に取りかかりました。
その日の、夕陽がまだ高い頃、江口さんがやって来ました。急いで来たとみえて、額に汗をにじまし、息を切らしています。A女の顔を見ると、いきなり言いました。
「やっぱり、火が出ましたよ。でも、ボヤでよかった。」
「わたくしには、もう分っておりました。まあお上りなさいよ。」
「いえ、そうしてはおられませんの。」
玄関での立ち話しでした。
「どうして、お分りになりましたの。」
A女は昨夜のことを話しました。その落着き払った様子を、江口さんは呆れたように眺めていましたが、こんどはせかせかと、事の次第を話しました。
その日の正午頃、二階の中程に住んでる人の室から、火が出ました。アイロンをうっかりつけっ放しにして、買い物に出たあと、過熱のために畳をこがし、襖にも火がついたらしいとのことでした。発見された時は、もう窓から濛々と黒煙が出ていました。みんなで寄ってたかって消し止め、幸に大事に至らないで済みましたが、一時は大騒ぎだったそうです。
「あなたが仰言った通りよ。身祿さんて、すごいんですね。