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しもばしら
霜柱
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,328 字 · 29 页
という結果を伴っていたようであった。
雪ノ井で飲んだ日から十日ほどのち、城中の長廊下で、喜兵衛は石沢金之助に声をかけられた。
「その後どうだ」と石沢が訊いた、「辛抱ができそうか」
「うん」喜兵衛は眩しそうな眼つきをし、ちょっと口ごもった、「まあ、大丈夫だろう」それからぽつりと云った、「あの老人は気の毒な人らしいな」
石沢は訝しそうに眼を細め、喜兵衛は顔をそむけながら、いそぎ足に去った。それは正月下旬のことであったが、二月にはいってまもなく、喜兵衛は石沢家へ夕餉に呼ばれていった。和泉すみとの祝言が近づいたので、その打合せもあり、喜兵衛は珍しく上機嫌に酔った。そのうちにふと、彼は急に首を垂れながら「可哀そうな人だ」と呟いた。
言葉は簡単であるが、心から滲み出るような、感情のこもった口ぶりで、石沢は思わず彼に振向いた。そして、彼が誰のことを云っているか、すぐに理解した。
「おい石沢」喜兵衛は顔をあげた、「江戸屋敷に時岡八郎兵衛という足軽がいたのを覚えてるか」
「知らないな」
「けいさん」と喜兵衛は石沢の妻に呼びかけた、「酒をもう少し頼みます」
けいは良人の顔を見た。