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きりのなか

霧の中

豊島 与志雄

――「正夫の世界」――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,920 字 · 40 页

青空文庫

しまいに鳥になって、夜通し歩きまわって、今でもやはりほうほう……と呼びつづけているんだって。」

「そんな話、君はほんとにするのかい。」

「作り話にきまってるさ。」

「じゃあ、どうなるんだい。」

「お婆さんのことから、その鳥を思い出したんだよ。僕はその鳥の声がとても好きだ。こっちに来る前、田舎に行ってた時、毎晩きいた。真暗な夜の田圃の中って、すごいよ。でもその鳥が鳴いてると、安心するんだ。どんな真暗な夜出ていっても、どこかで、ほうほう……鳴いてるんだ。」

正夫は田舎に半月ばかり行ってた間に、殆んど毎晩、川漁にいった。夜の川ほど神秘に満ちてるものはない。浅瀬があり、深い淵があり、洞窟があり、泥中のもの、陸上のもの、水中のもの、更に闇夜のものなど、あらゆるものがうろついているのである。

大きな河の浅瀬でする投網は、さほど面白くなかった。流し鈎の釣りもさほど面白くなかった。刃物での魚切りは少し変っているが、もう稲がのびすぎていた。

何よりも心躍るのは、ウケをつけておいて魚をとることだ。竹を細くわったのを煽んで、円い箍のまわりにとりつけ、先端はせばまるようにし、ねじりながら縄で結えられるようになっている。