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きりをとらえるはなし

霧を捕える話

中谷 宇吉郎

「西日本新聞」1955(昭和30)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,063 字 · 3 页

青空文庫

もう少し水が得られたら、パイナップルの収穫は、飛躍的に増すはずなのである。

それでホノルルのパイナップル研究所には、地形による降雨量の変化を研究している気象学者がいる。大きい立木の下に、沢山の雨量計を置いて、雨量に差があるか否かを調べてみた。ところが驚いたことには、立木の下では、いつでも数倍、時には十倍以上の雨量があったそうである。すぐ近くの、木の影響のない所に置いた雨量計と比較しての話である。

理由はきわめて簡単で、雨雲の粒、即ち霧が、木の葉にくっついて、雫となって落ちて来るからである。それでこの研究者は、網か糸かを使って、霧粒を捕えて、雫として採る方法を、いろいろ工夫していた。設備の費用と、耐久力と、霧の捕捉量と、その水による増収量とを計算すれば、経済的に成り立つか否かが決定されるわけである。

ところが面白いことには、北大の低温研究所でも、数年前に、たしか三年か続けて、北海道東部の海霧の研究をしたことがある。結果は時の所長堀教授の手で、英文の「霧の研究」という大部な報告として発表されている。

これは霧粒を防霧林で捕えて、内陸にはいるのを防ぐのが目的であった。