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つゆのこたえ
露の答
ぬばたまのなにかと人の問ひしとき露とこたへて消なましものを
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,237 字 · 14 页
選りに選って一番安物を掴みだしてくるとは貴様の下素根性のせいだろう、とブツブツ叱言だか強がりだか言っていたそうです。そこで病床から指図して、お玉の別居を申渡した由ですが、之は快心事であったに相違ない。さすがのお玉も抗する術なく、かくて退院と共に晴れて新婚生活にはいったのですから、五郎兵衛は腹の脇差を最大限に利用して利息まで稼いだ。爾来政界への野心もなく悠々新夫人との生活を愛したのですが、新夫人は幸薄く、五郎兵衛に先じて鬼籍の人となった。わすれがたみが一人、女児で、折葉という。五郎兵衛は折葉を愛すること一方ならず、散歩に、酒席に、観劇に、訪問に、影の形に添う如く手放したことがない。折葉はこの物語の主要なる人物の一人です。
五郎兵衛は折葉十二の年に永眠しました。晩年は読書、碁、酒、観劇などに日を送り、折葉にまさる愛人はなかったと申しますから平穏な晩年です。
その二
私が加茂五郎兵衛の伝記編纂に当ることになったのは、木村鉄山先生のはからいでした。先生は明治中期の政客ですが、明治後期は企業家、大正以後は趣味家です。別段出入りをしていたわけではなかったのですが、同郷のせいで私の名前を記憶にとどめておられ、折にふれて拙作に目を通されたこともあった由で、一般の世評よりも高く評価して下さった。