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あおいめがね

青い眼鏡

野村 胡堂

「富士」1929(昭和4)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,201 字 · 24 页

青空文庫

花房一郎は受話器を取って耳に当てました。

「ハイハイ、私は花房、エエそうです、貴女は? 名前は言われない、ハテナ。御用は、何? 今晩、日本橋辺まで来て見ろ、大谷千尋が何んか大仕事をするかも知れない、フーム、どうしてそれが判ったのです……それも言われない。そんなあやふやな事を、私は信用して出動すると思いますか、何? ――きっとする、青い眼鏡の仕掛を知って居るなら――何? もう一度、青い眼鏡の――モシモシ、それはどんな意味ですか、モシモシ、モシモシ、あッ切ってしまった」

花房一郎は、がちゃりと受話器を掛けて、暫らく考えこみました。

「花房君、今のは誰の電話だ」

「判りません、心当りは無いじゃありませんが、――いや、そんな筈は無い。――お聞きの通りの電話ですが、相手は若い女だという事以外には、何んにもわからないのです。騙されるまでも、兎に角行って見ましょう。オートバイで連絡を取らせますが、制服私服半々位に、警官を五十名ほどお願いいたします、それでは私は一人で瀬踏みをして参りましょう」

「大丈夫か」

「虎穴に入るより外に方法はありません」

屹として立った花房一郎の面には、死も亦辞せざる決心の色が浮んで居ります。