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あおいめがね

青い眼鏡

野村 胡堂

「富士」1929(昭和4)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,201 字 · 24 页

青空文庫

「ワアッハハハ、ハッハッハハ」

轟然として笑いが爆発します。

都銀行の地下室、クラブと食堂と酒場と三つに仕切った、その中の食堂へ陣取ったのは、此処の長い常連で、身分は知らないが、互に顔も名も知り尽して居る十二三人の男女です。

「冗談は冗談として、その智慧が入用だという話はどんな筋なの、小出しの智慧は持って居ないが、大口の智慧なら持って居るわ、随分用立てて上げてもいいのよ」

「村岡夫人の大口の智慧と来た日には尚お凄い――」

「誰れ? そんな隅っこから人をくさすのは?」

「我輩」

「何んだ、禿ちゃびんの宇佐美さんか、あんまり変な事を言うと、これからいくら拝んでも交際ってやらないからいい」

「ワッ――、ハッハッハッ」

又も轟然たる笑い、

「いやはや、呆れた婆さんだ、此間も私の胸倉を捉まえて、いくらノラクラ文士でも、住所位は人に知らせて置くもんだ、そうでもなければ、毎日都銀行の地下室へ、一度ずつ顔を出しなさいッ――って言ったのは誰だっけ?」

「畜生畜生、あんな出鱈目を言う、いけ好かない爺っちゃ無い、お前さんこそ、この間私の家へやって来て、多勢居る前で、村岡さん貴方は何時までもそうして後家を立て通す気か、それとも後添を探す気でもあるのか、――って、執拗く聞いた癖に、そして、万一再縁してもいいようなら、私にも少し考があるって――」